メニエール病と鍼灸 ― 東洋医学の視点から体質改善を目指す

 

 

メニエール病は、めまいや耳鳴り、難聴といった症状を繰り返す内耳の疾患として知られています。発作的にぐるぐる回るような激しいめまいが数十分から数時間続くこともあり、日常生活に大きな支障をきたす病気です。また、耳の閉塞感や圧迫感、低音域の難聴、耳鳴りなどを伴い、発作が繰り返されることで精神的なストレスも増していきます。

現代医学では、内耳のリンパ液の過剰な貯留(内リンパ水腫)が原因とされ、薬物療法(利尿薬、抗めまい薬、ステロイドなど)や生活指導(塩分制限、ストレス管理)が中心となっています。とはいえ、根本的な原因が特定できない場合も多く、再発や慢性化に悩む方も少なくありません。

 

 


 

 

東洋医学の視点から見るメニエール病

東洋医学では、メニエール病のような症状を「眩暈(げんうん)」や「耳閉(じへい)」と捉え、その原因を体全体のバランスの崩れと考えます。特に、「肝」「腎」「脾」の機能低下が関係しているとされます。

 

  •  肝(かん)は、気血の流れを調節し、感情とも密接に関わります。ストレスや怒りなどの情緒の乱れが肝の働きを阻害し、「肝陽上亢(かんようじょうこう)」と呼ばれる状態になると、上半身に余計な熱や気が集まり、めまいや頭痛、耳鳴りを引き起こすことがあります。
  • 腎(じん)は、成長や老化、内耳の働きとも関係しており、腎精が不足すると耳の症状やふらつきが起こりやすくなります。
  • 脾(ひ)は、飲食物から気血を生み出す臓であり、脾の機能が弱ると水分代謝が滞り、体に「痰湿(たんしつ)」が溜まりやすくなります。この痰湿が頭部や耳に影響することで、めまいや耳の閉塞感が生じると考えられています。

 

つまり、東洋医学では「気血水(きけつすい)」のバランスの乱れがメニエール病の背景にあると捉え、症状の改善には体質全体の調整が必要とされます。

 

 

 

鍼灸でのアプローチ

鍼灸治療では、患者さん一人ひとりの体質や生活習慣を見極め、体全体のバランスを整える施術を行います。メニエール病に対しては、以下のような方向性で施術が組み立てられます。

 

1. 気血の巡りを改善する

首・肩のこりがあると頭部への血流が悪くなり、耳の症状が悪化しやすくなります。鍼灸では肩周りの緊張を和らげ、気血の流れを良くすることで、耳への圧迫感やめまいを軽減します。

 

2. 自律神経を整える

メニエール病はストレスや疲労が誘因になることが多く、交感神経優位な状態が続くと発作が起きやすくなります。鍼灸には副交感神経を優位にし、リラックス状態を促す作用があるため、自律神経のバランスが整い、症状が安定しやすくなります。

 

3. 水分代謝の改善

東洋医学的には「痰湿(たんしつ)」の排出が重要です。脾胃の機能を高め、体内の余分な水分の代謝を促すことで、内耳のリンパ液の異常な貯留を防ぎ、発作の予防につながります。

 

4. 使われる代表的なツボ

 

・ 翳風(えいふう):耳の後ろにあり、耳鳴りや難聴に効果。

・ 聴宮(ちょうきゅう):耳の前にあるツボで、耳の機能を調整。

・ 百会(ひゃくえ):頭のてっぺんにあり、自律神経を整える。

・ 足三里(あしさんり):脾胃を強化し、水分代謝を改善。

・ 内関(ないかん):吐き気やめまい、ストレス軽減に有効。

 

 

鍼灸は「予防」と「再発防止」にも効果

鍼灸治療は、発作が起きた時の対症療法というよりも、体質を改善し、発作が起こりにくい状態へ導く「予防的治療」に強みがあります。日頃から自律神経や水分代謝のバランスを整えておくことで、メニエール病の再発リスクを抑えることができます。

また、鍼灸は副作用が少なく、薬が合わない方や妊娠中の方にも選択肢として有効です。定期的な施術によって体調が整うことで、睡眠の質や集中力も向上し、日常生活の質が全体的に向上することが多いです。

 

 

おわりに

メニエール病は再発を繰り返すことで心身の負担が大きくなり、日々の生活に不安をもたらします。

西洋医学的な対処とあわせて、東洋医学の視点から鍼灸による体質改善を取り入れることで、長期的に症状を安定させることが期待できます。

単なる局所治療ではなく、体全体をみて整える鍼灸の力を、ぜひご自身の健康管理に活かしてみてください。

 

 

 

 

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