吐き気とはどんな症状か

 

吐き気は、胃や食道、脳などに異常が生じたときに現れる「体からのサイン」です。

車酔いや二日酔いといった一過性のものから、胃腸炎や片頭痛、ストレス、自律神経の乱れによるものまで原因はさまざまです。

場合によっては、めまいや発熱など他の症状を伴い、生活の質を大きく下げてしまうこともあります。

西洋医学では胃腸の不調や中枢神経系の異常として検査・治療が行われますが、原因がはっきりせず慢性的に続く吐き気に悩まされる方も少なくありません。

 

 

 

東洋医学から見た吐き気

 

東洋医学では、吐き気は「胃の気」が乱れている状態と考えます。

胃の気とは食べ物を受け入れ、下へと消化を進めていく働きです。この流れが逆行すると、むかつきや吐き気となって現れます。

また、吐き気にはいくつかのパターンがあります。

 

• 胃気虚弱型：食欲不振や疲れやすさを伴う。胃の力不足による吐き気。

• 肝気犯胃型：ストレスで肝の気が滞り、胃を圧迫することで起こる吐き気。イライラや胸のつかえを伴いやすい。

• 痰湿阻胃型：体内の水分代謝が滞り、痰や湿が胃を覆うことで吐き気を感じる。頭重感やめまいを伴うことも。

• 胃熱型：暴飲暴食や香辛料の摂りすぎで胃に熱がこもり、吐き気や口の苦みが現れる。

 

このように、同じ「吐き気」でも体質や背景によって原因の解釈が異なるのが東洋医学の特徴です。

 

 

 

鍼灸の役割

鍼灸は、ツボを刺激して体の気血の巡りを整え、自律神経を調整する療法です。吐き気に対しては以下のような働きが期待できます。

 

1. 胃腸の機能を整える
   鍼やお灸によって胃の蠕動運動を促し、消化の流れをスムーズにすることで、吐き気や胸のつかえを軽減します。

2. 自律神経の調整
   ストレスや緊張で悪化する吐き気は、自律神経の乱れと関係が深いです。鍼刺激は副交感神経を優位にし、リラックス効果をもたらします。

3. 水分代謝の改善
   体に余分な「湿」が溜まって起こる吐き気には、利水効果のあるツボを使って水分バランスを整えます。

4. 全身の巡りを改善
   吐き気が慢性化すると血流が滞りやすくなります。鍼灸で全身の巡りを良くすることで、体調全般の底上げが期待できます。

 

 

 

 

 

 

よく使われるツボ

 

• 内関（ないかん）：手首内側にあるツボ。吐き気や乗り物酔いに効果的。リストバンド型の酔い止めグッズにも応用されています。

• 中脘（ちゅうかん）：みぞおちとおへその中間にあるツボ。胃腸の不調全般に効きます。

• 足三里（あしさんり）：膝の下にある代表的な養生のツボ。胃腸の働きを整え、全身の気力を補います。

• 天枢（てんすう）：おへそから左右に指三本分の位置。消化器系のトラブルに用いられるツボです。

 

これらのツボはセルフケアで押してもよいですが、専門家による鍼灸施術では体質や症状に合わせた組み合わせができるため、より効果的に作用します。

 

 

 

吐き気と心の関係

 

吐き気は心因性に現れることも多い症状です。

緊張した場面で胃がムカムカしたり、ストレスが強いと食欲がなくなったりする経験は誰にでもあるでしょう。

東洋医学では心と胃の関係を重視し、精神的ストレスによる吐き気にもアプローチできます。

鍼灸治療中は副交感神経が優位になり、自然と呼吸が深まりリラックス状態に導かれるため、心因性の吐き気にも有効です。

 

 

 

鍼灸施術の流れ

 

吐き気で来院された方には、まず詳しい問診を行い、食生活・睡眠・ストレスの有無などを確認します。

その後、脈や舌を診て、体質や原因を見極めます。施術は胃腸を整えるツボを中心に選び、必要に応じてお灸で温めて気の流れを助けます。

数回の施術で「吐き気の頻度が減った」「食欲が戻ってきた」と感じる方も多く、体質改善を目指して継続される方もいらっしゃいます。

 

 

 

日常生活でできる工夫

鍼灸に加えて、日常での工夫も吐き気改善には重要です。

 

• 食べ過ぎ・飲み過ぎを避ける

• 冷たいものを控え、胃を冷やさない

• 規則正しい食事と十分な睡眠を心がける

• 軽い運動や深呼吸でストレスを発散する

 

こうした習慣を積み重ねることで、吐き気に強い体づくりができます。

 

 

 

まとめ

 

吐き気は体の不調を知らせる大切なサインですが、原因が多岐にわたり、なかなか改善しないケースもあります。

鍼灸は胃腸の働きを整え、自律神経や水分代謝の乱れにも幅広く対応できる自然療法です。

慢性的な吐き気や原因不明の不快感に悩んでいる方にとって、心身をやさしく整える選択肢となり得るでしょう。